免疫シグナル

Cell Signaling

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概要

免疫シグナルでは、免疫疾患におけるT細胞の活性化・機能の修飾を目指して、T細胞の活性化とホメオスタシスの分子メカニズムを解析しています。とりわけ本センターにおいては、遺伝子操作とイメージングの方法を用いて一細胞におけるシグナル伝達分子のダイナミックな調節系の解析をしています。

(1) T細胞の抗原認識と活性化の時空間制御
免疫応答の初期活性化のメカニズムを明らかにするために、抗原認識に伴う免疫シナプス形成と活性化の過程におけるシグナル分子のリアルタイムでの動態を解析しています。既に、免疫シナプス形成の全行程におけるレセプター(TCR)、キナーゼ(ZAP-70)、アダプター(SLP-76)の動態を解析し、これらを含むTCRミクロクラスターが抗原認識とT細胞活性化のユニットであることを発見しました。この発見に基づいて、これまでのT細胞活性化機構をミクロクラスターとの関係から再検討しています。とりわけ、T細胞活性化に不可欠な副刺激の制御系との関係や活性化ノプラットフォームと言われる脂質ラフトの関与などを、イメージングを用いて時空間制御の解析をしています。

(2) 自然免疫と獲得免疫のシグナル制御におけるクロストーク
T/B細胞は抗原受容体に会合するITAMを有するアダプター分子(CD3,Igα/β)を介して活性化シグナルを惹起する。自然免疫系細胞(DC、マクロファージなど)で機能しているITAMを介するレセプター(FcγR, TREM, OSCARなど)によるミエロイド系での細胞活性化、特にNF-κB活性化を解析した。リンパ球ではCARMA1-Bcl10複合体を介して、IKK、NF-κB活性化が誘導されるのに対して、DCなどではCARD9-Bcl10複合体を介して活性化されることが判明した。細胞系譜特異的にアダプター分子CARMA1とCARD9が使い分けられていると思われる。これらを含めて、自然免疫系と獲得免疫系とで、類似したシグナル伝達系における制御システムの異同を解析している。

図1. TCR活性化シグナルの可視化。T細胞は、TCRを介して抗原/MHCを認識し、活性化される。抗原認識シグナルはLckによってリン酸化されたCD3-ITAMにチロシンキナーゼZAP-70が結合して活性化され、下流のアダプター分子LAT, SLP76をリン酸化して、種々の機能発現に至る。
図2. T細胞活性化におけるTCRとシグナル分子との動態の解離レセプター(TCR)、キナーゼ(ZAP-70)、アダプター(SLP76)の脂質二重膜上での動態を解析した。TCRのみが免疫シナプスの中心部分に集まり、キナーゼ・アダプターなどシグナル分子は中央に集積せず、TCRと解離した。活性化シグナルは辺縁のミクロクラスターで誘導される。
図3. TCRミクロクラスターから見た免疫シナプスの機能のモデル抗原認識にともなって、TCRミクロクラスターが形成されて初期活性化を担う。TCRは免疫シナプスの中心に移行するが、シグナル分子は解離して中心に行かない。辺縁部に新たにミクロクラスターが形成され、活性化維持シグナルを誘導する。cSMACはTCRの取込・分解に関与しシグナル伝達にあまり関与しない。
図4. リンパ系とミエロイド系で活性化に選択的使われるアダプター分子CARMA1, CARD9TCR/BCRを介した活性化がCARMA1-Bcl10複合体を介するのに対して、ミエロイド系DCなどのITAMを含む、またはITAM+アダプターと会合するレセプターを介する活性化には、CARD9-Bcl10複合体が必要である。それぞれを、L-CBMとM-CBM複合体と呼ぶ。

主任研究者

斉藤 隆 招へい教授

研究内容

T細胞の活性化と分化の分子イメージング

学歴

1982.3 千葉大学 大学院医学研究科 博士修了

職歴

1988 千葉大学医学部助手
1989 千葉大学大学院医学研究科分子遺伝学講座教授 (-2003)
2001 理化学研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センターグループディレクター
2005 理化学研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センター副センター長

メンバー

  • 斉藤 隆 招へい教授
    takashi.saitoriken.jp

業績

論文

  • Liang Y., Cucchetti M., Roncagalli R., Yokosuka T., Malzac A., Bertosio E., Imbert J., Nijman I.J., Suchanek M., Saito T., Wulfing C., Malissen B. and Malissen M.: Rltpr, a lymphoic lineage-specific actin-uncapping protein is essential for CD28 costimulation and regulatory T cell development. Nat. Immunol. in press.
  • Kawashima T, Kosaka A., Yan H., Zijin G., Uchiyama R., Fukui R., Kaneko D., Kumagai Y., You D-J., Carreras J., Uematsu S., Jan M.H., Takeuchi O., Kaisho T., Akira S., Miyake K., Tsutsui H., Saito T., Nishimura I. and Tsuji N.M.: Double-stranded RNA of small intestinal commensal but not pathogenic bacteria triggers TLR3-mediated IFNβ production by dendritic cells. Immunity. In press.
  • Tsukumo, S-I., Unno, M., Muto, A., Takeuchi, A., Kometani, T., Kurosaki, T., Igarashi, K. and Saito,T.: Bach2 maintains T cells in a naive state by suppressing effector memory-related genes. Proc Natl Acad Sci USA. 110(26): 10735-10740, 2013.
  • Yamaguchi, T., Kishi, A., Osaki, M., Morikawa, H., Prieto-Martin, P., Wing, K., Saito, T. and Sakaguchi, S.: Construction of self-recognizing regulatory T cells from conventional T cells by controlling CTLA-4 and IL-2 expression. Proc. Nat. Acad. Sci. USA. 110(23):E2116-E2125, 2013.
  • Ishikawa, T., Itoh, F., Yoshida, S., Saijo, S., Matsuzawa, T., Gonoi, T., Saito, T., Okawa, Y., Shibata, N., Miyamoto, T. and Yamasaki, S.: Identificiation of distinct ligands for Mincle and Dectin-2 in the pathogenic fungus Malassezia. Cell Host & Microbe. 13(4): 477-488, 2013.
  • Jiang, Y., Arase, N., Kohyama, M.,Hirayasu, K., Suenaga, T., Jin H., Matsumoto, M., Shida, K., Lanier, L.L., Saito, T. and Arase, H.: Transport of misfolded endoplasmic reticulum proteins to the cell surface by MHC class II molecules. Int. Immunol. 25(4):235-246, 2013.