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2026.10.20

好中球の暴走を制御せよ! ―難病血管炎の腎臓障害、その「はじまり」を可視化― (西出, 熊ノ郷 G, in JEM)

PRESS RELEASE

大阪大学大学院医学系研究科の西出真之講師(呼吸器・免疫内科学)、松下浩明研究員(先端免疫臨床応用学共同研究講座)、水野裕美子特任助教(常勤)(呼吸器・免疫内科学)、西村桂研究員、楢﨑雅司特任教授(常勤)(先端免疫臨床応用学共同研究講座)、熊ノ郷淳総長らの研究グループは、厚生労働省の指定難病であるANCA(アンカ/抗好中球細胞質抗体)関連血管炎※1に伴う腎障害が、腎臓のどこで始まり、どのように進行するのかを明らかにしました。

 ANCA関連血管炎では、自己抗体によって好中球が過剰に活性化し、腎臓の糸球体※2などを傷つけることが知られています。しかし、腎臓のどこで炎症が始まり、周囲の細胞を巻き込みながら腎障害が進んでいくのかは、十分に分かっていませんでした。

 今回、研究グループは、大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学講座、泌尿器科学講座との共同研究体制で、新たに診断され、まだ治療を受けていないMPO※3-ANCA陽性MPA患者8人と健常腎提供者4人の腎組織を、細胞一つひとつの位置と働きを調べる空間トランスクリプトーム解析※4で詳しく解析しました。その結果、通常の病理検査ではまだ正常に見える糸球体の周囲でも、すでに尿細管の細胞が傷つき、好中球やリンパ球が集まり始めていることを発見しました。傷ついた尿細管細胞は免疫細胞を呼び寄せる物質を作り、好中球と隣り合う「好中球―上皮細胞ニッチ※5」を形成していました。そして、病気が進むと炎症は糸球体の中へ広がり、さらに線維化に関わる細胞が増えていくことも分かりました。

 さらに、患者の血清中の自己抗体を詳しく調べると、MPOの複数の場所を認識する自己抗体を持つ患者では、病気の活動性が高い傾向がみられました。この結果を踏まえ、研究グループは、MPOの異なる場所を認識する3種類の抗体を作製して組み合わせ、マウスに投与しました。その結果、ヒトのANCA関連腎炎によく似た重い腎炎をマウスで再現することに成功しました。このマウスの腎臓でも、患者さんとよく似た「好中球―上皮細胞ニッチ」が確認されました。

 また、MPOには結合する一方で、好中球Fcガンマ受容体※6を強く刺激しないよう設計した「片腕型」抗MPO抗体※7を用いると、好中球の活性化とマウスの腎障害を抑えることができました。これは、免疫全体を広く抑えるのではなく、自己抗体による好中球の「暴走」を狙って抑える新たな治療法につながる可能性を示す成果です。
(JEM on June 19, 2026)

図:傷ついた腎臓の細胞の周りに好中球が集まる「病気のはじまりの場」
傷ついた腎臓の細胞(黄)の周囲に好中球(ピンク)が集まっている様子。研究グループは、このような細胞の集まりを「好中球―上皮細胞ニッチ」と名付け、腎障害が広がる起点の一つと考えた。



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