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2019.10.25

【サイエンスカフェ】おなかの中の妙なる調和~腸内細菌と免疫細胞のクロストーク~

REPORT

2019年10月16日(水)に、アートエリアB1(京阪電鉄 なにわ橋駅)にて、大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 粘膜免疫学 准教授 梅本英司さんをゲストに招き、「おなかの中の妙なる調和~腸内細菌と免疫細胞のクロストーク~」というテーマでサイエンスカフェを開催しました。

腸内細菌の役割や様々な疾患や老化との関係といった身近な話題から、乳酸菌等が産生する代謝分子の乳酸・ピルビン酸が小腸のマクロファージを活性化し、病原性細菌に対する抵抗性が増加するという最新の研究成果についてお話しいただきました。近年、腸内細菌叢のバランスを整えることが健康を維持に重要だという話題をメディア等で目にする機会が増えました。小腸における腸内細菌叢を整えることにより、腸管の病原性細菌に対する免疫機能を高めることができる可能性を示しており、今後の研究の進展が期待されます。

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当日寄せられたご質問への回答
Q1.腸内細菌と自閉症の関係について、自閉症は先天的な疾患だと思っていました。影響を与える細菌叢は、母親のものですか?本人のものですか?
A:自閉症の原因は遺伝的要素を含めいろいろと考えられ、あくまで腸内細菌はひとつの要素として捉えていただいた方がよいかと思います。自閉症本人の腸内細菌を解析した研究が多く、実際に抗生剤の一種バンコマイシンを経口投与することにより、自閉症の症状が改善したという介入試験の報告もあります。一方、マウスを用いた実験では、母親の腸内細菌が胎児の脳発達に影響を与えるという報告もあり、母親の腸内細菌が子供の自閉症の発達に影響を与える可能性も考えられることから、今後の詳しい研究が必要です。

Q2.アレルギー疾患は腸内細菌が関わっていると聞きますが、酪酸を摂取すれば改善しますか?
A:現時点でははっきりわかっていませんので、今後の課題になるかと思います。

Q3.便通がいいことと、ステキな腸内細菌が腸内にいることは比例しますか?
A:完全に比例するかどうかまではわかりませんが、腸内細菌には腸管を刺激し、便通をよくする作用も知られています。一方、便秘になると「腐敗したもの」が身体にため込まれることにもなりますので、身体にはよくありません。便の色や形でおおまかな腸内細菌の状態を知ることができるとも言われます。一般的にはバナナ状で柔らかく、黄色から褐色で、匂いはあっても臭くない便が良いようです。

Q4.腸内細菌の乱れを起こす要因は何か。また要因の探し方はどのように行われるのか。
A:たとえば、腸内細菌叢のパターンは長期的な食生活と関係があると言われています。また、年齢とともに腸内細菌叢のパターンも変化しますが、腸内細菌の乱れを起こす要因には不明な点も多く残されています。要因の探し方としては、疑われる要因をもつ対象者(例えば特徴的な食生活をしている方に被験者になってもらう)の腸内細菌叢を、一般的な腸内細菌叢のパターンを比較することが考えられます。あるいは逆に、特徴的な腸内細菌叢をもつ方の生活習慣や食生活を詳細に調べるということも行われます。

Q5.無菌マウスへの通常マウスの腸内細菌を移植した場合でも体脂肪率が27%も増えていますが、その理由は何ですか?
A:無菌マウスは通常のマウスに比べて体脂肪が少ないことが知られています。この実験系では、無菌マウスに腸内細菌を移植しているために、通常のマウスの腸内細菌を移植しても一定程度、体脂肪が増加したと考えられます。

Q6.乳酸がマクロファージに作用する生理学的意義はなんですか?
A:私たちは乳酸やピルビン酸がサルモネラのような病原性細菌に対する免疫応答や抵抗性を増強することを見出していますので、このような代謝産物は少なくとも腸管に感染する病原性細菌から私たちの身体を守る可能性があると考えています。