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ゴルジ装置の酸性化と機能にとって重要な新規イオンチャンネルを発見 (前田准教授らが Nature Cell Biology に掲載)

免疫学フロンティア研究センター 前田裕輔准教授らの研究グループは、細胞内でタンパク質・脂質の輸送や修飾が正しく行われるためには、ゴルジ装置と呼ばれる細胞内小器官のpH(酸性度)が正しく維持調節されていることが必要であることを示しました。また、新しく発見されGPHRと命名されたタンパク質がイオンチャンネルとして機能し、ゴルジ装置のpHを調節していることを解明しました。


<研究の背景と経緯>

細胞は生命の営みのために絶えず新しいタンパク質・脂質などを合成し、また再利用しています。細胞表面や細胞外に発現されるタンパク質は、合成の場である小胞体から目的地に至る過程で、ゴルジ装置と呼ばれる細胞内小器官を経由し、そこでタンパク質が正しく機能できるように様々な糖鎖修飾やプロセッシング(切断)を受け、正しい目的地に至る経路に仕分けされます。こうした流れに沿って小胞体、ゴルジ装置などは固有のpHを持つことがこれまでの研究で示されてきました(図1)。

2008-0922_Figure1.jpg

ゴルジ装置の機能に関与する多くのタンパク質が正常に機能する場としてそのpH調節の重要性が示唆されていましたが、その本当の必要性やどのようにそのpHが調節されているかは詳しく分かっていませんでした。

ゴルジ装置がうまく機能しないとタンパク質の機能が損なわれ、輸送が滞り、糖鎖修飾不全症といった疾患が起こります。そこでゴルジ装置の機能とそのpHの関係を明らかにし、pH調節機構を解明することは重要な仕事であると考えられました。


<本研究の内容>

本研究はタンパク質の流れに注目し、この異常を示す変異細胞を新たに樹立することにより、問題の解明にアプローチしました。その結果、
1.一つのタンパク質の機能不全によりゴルジ装置のpHが上昇し、その結果、流れの停滞、様々な糖鎖修飾の異常、ならびにゴルジ装置の形態異常が実際に起こることを確認しました。
2.ゴルジ装置のpH上昇の原因となっていた新規タンパク質を同定し、GPHRと命名しました。GPHRはゴルジ装置に局在する膜型タンパク質であることから、GPHRが直接pHの調節に関与していることが示唆されました。
3.GPHRの機能解析によって、これがイオン(主に塩素イオン)チャンネルであることを証明しました。


これらの知見とこれまでに電気生理的な手法を用いて得られた知見を併せることにより、GPHRは塩素イオン(マイナスイオン)を通過させることによってゴルジ装置内腔に集積したプロトン(プラスイオン)の電荷を打ち消し、プロトンポンプがより効率的に働けるようにすることによって、そのpHを最適な値で調節維持しているということを明らかにしました(図2)。

2008-0922_Figure2.jpg <今後の展開>

ゴルジ装置による修飾や切断は細胞のもっとも基本的な営みです。これらの機能がうまく働かないと、糖鎖修飾不全症といった疾患が起こります。糖鎖修飾不全症は様々な原因で発症し、まだ原因が同定されていない疾患も多数存在することから、それらの同定、治療、発症予防に本研究が役立つことが期待されます。最近では、pHの上昇がセラミドの蓄積を引き起こし、疾患がおこるという報告もなされました。今後、pHによるゴルジ装置のより詳細な調節機構を解明していきたいと考えています。

 

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<お問い合わせ先>

前田 裕輔(まえだ ゆうすけ)
〒565-0871
大阪府吹田市山田丘3-1
大阪大学免疫学フロンティア研究センター(微生物病研究所内)
糖鎖免疫学研究室

Tel: 06-6879-8329  Fax: 06-6875-5233
E-mail: ymaeda@biken.osaka-u.ac.jp

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