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Research
2009.03.26

肝臓由来のIL-7はT細胞の反応性を制御している。(村上正晃准教授らが Immunity に掲載)

<研究の背景と経緯>

IL-7はT細胞の反応性を規定するサイトカインとして古くから知られてきた。これまでの研究から、(i)IL-7のノックアウトマウスではT細胞がほとんど存在しないこと、(ii)活性化T細胞ではIL-7受容体の発現が非常に低下するが、メモリーT細胞では逆に上昇していること等の実験事実から、"生体内では、IL-7は外来刺激によって誘導される事は無く、T細胞へのIL-7の刺激はIL-7受容体の発現強度によって制御されている"と信じられてきた。一方、肝臓は炎症のセンサーとして知られてきた。実際に感染等による炎症後に産生されるIL-6は肝臓に作用してCRP等の急性期タンパクを血中に発現する。CRPを含む急性期タンパクは、一般的な血液検査にも用いられて生体内の炎症のマーカーとして知られている。しかし、これまでに急性期タンパクでT細胞に直接作用するものは知られていなかった。


<本研究の内容>

今回、我々は、感染後のTLR信号にて誘導される1型インターフェロンが肝細胞に直接作用して肝臓から血中に多くのIL-7が循環すること、さらに、そのIL-7がCD4+T細胞およびCD8+T細胞の生存を誘導してCD4+T細胞およびCD8+T細胞の反応性を増強することを示した。つまり、IL-7は肝臓から感染等によって引き起こされた炎症時に誘導される急性期タンパクでT細胞に直接作用してその機能を増強して感染等を制御するサイトカインである事が判明した。


Figure-20090326


<今後の展開>

肝臓でのIL-7の発現を人為的に制御する事で自己免疫疾患を抑制したり、より効率的なワクチンの開発につながる可能性がある。今回、肝臓からの新しい急性期タンパクとしてIL-7が同定された事から、更なるT細胞の制御をつかさどる急性期タンパクの存在が示唆される。



Article


<お問い合わせ先>

村上正晃・平野俊夫
〒565-0871
大阪府吹田市山田丘2-2
大阪大学大学院医学系研究科・生命機能研究科
大阪大学免疫学フロンティア研究センター・免疫発生学研究室
JST, CREST

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