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Research
2011.01.20

MHC class II依存性自己免疫疾患の発症のための4ステップモデル (村上正晃准教授、平野教授らが JEM に掲載)

自己免疫疾患とは、本来自分の体を病原体から守るべき免疫系が、自分自身の組織、臓器を攻撃して"難治性の慢性的な炎症"を誘導する病気である。多くの自己免疫疾患では、炎症が誘導される標的臓器は限られている。例えば、関節リウマチでは、関節への炎症反応がその病態を誘導する。これまで、各自己免疫疾患ごとの標的臓器の特異性の理由は以下のように考えられてきた:『本来正常な免疫系が持つ自己抗原に対するトレランスの破壊が原因』。この考え方は、ほとんどの自己免疫疾患が、遺伝学的にCD4+T細胞が抗原を認識するために必須な"MHCクラス2"遺伝子にリンクすることからも支持されてきた。しかし、ほとんどの自己免疫疾患では、免疫系が攻撃している"臓器の特異抗原"は特定されていない。

今回、なぜ、このような特異抗原が単離できないのかを説明するモデルを示した。IL-6依存性のリウマチモデル、F759マウスの関節炎はMHCクラス2とCD4+T細胞に依存するが、CD4+T細胞の抗原認識には依存しなかった。その発症機序を検討した所、(1)CD4+T細胞の活性化に伴うサイトカイン発現、(2)活性化CD4+T細胞の標的臓器への集積、(3)標的臓器での一過性のIL-6アンプ(間葉系細胞でのIL-17とIL-6刺激によるIL-6やケモカイン等の相乗的発現)の活性化(4)標的臓器のT細胞由来サイトカイン感受性の亢進の4つのステップが重要である事を示した。

この4つのステップの結果として、 IL-6アンプの標的臓器における"慢性的"活性化亢進が起こり、大量のIL-6やケモカイン等が局所で発現されて臓器特異的な慢性炎症に発展する。さらに、実験的脳脊髄炎の実験結果と合わせて考えると "CD4+T細胞の活性化" はサイトカインのソースとして重要であるが、この活性化は必ずしも標的臓器抗原に特異的である必要は無い。さらに、"活性化CD4+T細胞の標的臓器への集積"は、必ずしも標的臓器抗原に依存している必要は無く、標的臓器局所での感染、外傷や異物、あるいは微小出血などの"局所の事象/ Local events"によって誘導される。


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<お問い合わせ先>

村上 正晃
murakami@molonc.med.osaka-u.ac.jp

平野 俊夫
hirano@molonc.med.osaka-u.ac.jp
免疫発生学研究室
大阪大学免疫学フロンティア研究センター (IFReC)