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2011.05.02

B細胞が多発性硬化症の悪化を制御する仕組みを解明 (馬場准教授、黒崎教授、松本研究員らがImmunityに掲載)

大阪大学免疫学フロンティア研究センターの馬場義裕准教授、黒崎知博教授、松本真典研究員らと理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター分化制御研究グループ(黒崎知博グループディレクター)による共同研究グループは、免疫細胞の一つである制御性B細胞に細胞外からカルシウムを流入させるカルシウムセンサー「STIM」が、多発性硬化症の悪化を抑制する仕組みを解明しました。

多発性硬化症は、脳、脊髄、視神経などに炎症が起こり、運動麻痺や感覚障害などの神経症状の悪化を繰り返す疾患です。我が国での患者数は人口10万人あたり8.9人程度と推定されています。多発性硬化症の発症や悪化のメカニズムは未だ明らかにされていませんが、神経繊維をさやのように覆っている髄鞘と呼ばれる組織を免疫細胞が破壊することにより引き起こされると考えられています。近年、「制御性B細胞」と呼ばれる免疫細胞集団がこの脳脊髄炎を抑制することが報告され注目されていますが、その抑制メカニズムは不明のままでした。

今回、研究グループは多発性硬化症に類似する脳脊髄炎のマウス実験モデルを用いて、制御性B細胞への細胞外からのカルシウム流入が脳脊髄炎を抑制することを発見しました。さらに、このカルシウム流入にはカルシウムセンターであるSTIMが重要であることを明らかにしました。実際、B細胞でSTIMを欠損するマウスでは、脳脊髄炎を抑制することができず、神経麻痺症状の重篤化が観察されました。 これらの結果から、制御性B細胞においてSTIMの機能を人為的に制御することができれば、多発性硬化症に対する新たな治療法の開発につながるものと期待されます。


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<お問い合わせ先>

馬場 義裕(ばば よしひろ)
分化制御研究室
大阪大学免疫学フロンティア研究センター (IFReC)
Tel: 06-6879-4457 Fax: 06-6879-4460
babay@ifrec.osaka-u.ac.jp