News & Topics

Research
2011.10.31

炎症疾患の原因遺伝子の作用を解明
(審良拠点長らが Nat Immunol.に掲載)

Toll-like receptor (TLR) は,病原体の感染を認識し,サイトカイン発現を介して,炎症応答を惹起することが知られています。TLR により活性化した細胞内シグナルは,IκB kinase 複合体の活性化によるIκBαリン酸化を介してNF-κBの活性化を誘導し,IL-6 等の炎症性サイトカインの遺伝子発現を誘導します。加えて近年,私達はRNase であるRegnase-1 がIL-6 など炎症性サイトカインの遺伝子mRNA の不安定化を制御して炎症性疾患発症を抑制していることを明らかにしました。しかしながら,炎症期における転写後制御にRegnase-1 が関与しているかどうかは不明のままでした。

今回審良拠点長らの研究グループは,IκB kinase 複合体が炎症を調節する,新しいメカニズムを解明しました。それは、IL-1R やTLR 刺激に対しIκB kinase 複合体がRegnase-1 をリン酸化し、ユビキチン- プロテアソーム分解経路によりRegnase-1 を分解するというものです。その結果、IL-6 mRNA が安定化し、迅速なIL-6 産生につながります。また,Regnase-1 は,自身のmRNA を負に制御していることを発見し,IL-1R やTLR 刺激の負のフィードバックにRegnase-1 が関与していることが示唆されました。この新知見は,Regnase-1 をターゲットとした炎症性サイトカイン制御薬剤の開発に繋がる成果として期待されます。

この研究は最先端研究開発支援プログラム「免疫ダイナミズムの統合的理解と免疫制御法の確立」(中心研究者:審良静男教授IFReC 拠点長)の支援を受けて行われました。


Article


審良 Nat Immunol_解説.pdf


<お問い合わせ先>

審良 静男(あきら しずお)
自然免疫学研究室
大阪大学免疫学フロンティア研究センター (IFReC)